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あなたの住まいも危ない?能登地震転倒ビルから知る日本基礎設計の真実

最大震度7を観測した2024年能登半島地震。

この地震で、7階建てRC造ビルが転倒するという被害が起こりました。

これは、過去の日本の大地震でも例が少ない被害です。

原因については、調査中とのことですが、日経アーキテクチュアなどの専門誌で推察されている転倒の原因を紹介します。

その上で、あなたの住まいが安全であるかを今一度考える指標を提供します。

同じ地震があなたの住まい付近で起きたら?

結論は、

「同様に横倒しになる確率は低いが、財産価値の毀損は大いに考え得る」

です。

その理由を、日本の建物基礎設計に関する考え方に沿って解説し、あなたが住まいに対して知っておくべきことをお伝えします。

この記事を読めば、あなたの住まいに関する知見が広がります。

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目次

7階建てビル転倒のメカニズム

転倒したビルの基本情報

専門誌の記事による、転倒したビルの基本情報は下記の通りです。

建設地:石川県輪島市河井町

構 造:鉄筋コンクリート造

階 数:地下1階・地上7階

用 途:店舗・作業所・住宅

新築年:1973年4月(1976年一部増築)

所有者は、五島屋という輪島塗の老舗

建物は東側に横倒しになり、隣接する3階建ての木造住宅を押しつぶしました。

これにより2名の方が亡くなっています。

専門家が推察する転倒メカニズム

日経アーキテクチュアの記事では、

輪島市近郊のRC造被害を調査した東京大学地震研究所の楠浩一教授(災害科学系研究部門)が、現在ある情報から推察する転倒メカニズムを紹介しています。

「転倒メカニズムは明らかではないが、正面から見て左側(西側)の杭が引き抜け、右側の下部構造に過大な圧縮力がかかって壊れ、転倒したように考えられる。楠教授は、地下室の構造が杭に載っていた場合、地下室が杭に載っていなかった場合の2つの壊れ方が考えられるとする」

(日経アーキテクチュア記事引用)

上記をもう少し簡単に言うと、引張られる側の杭が建物から抜け

押し込まれる側にあった地下階部分が圧縮される力に耐えらえず圧壊した

または、

押し込まれる側の杭が途中で折れた。

これらのことから、地面にめり込むように倒壊したと推察されています。

引張られる側の杭が抜けた背景

引張られる側の杭が抜けてしまった背景には、建物の建設年が関係しています。

杭基礎の耐震性が問題になったのは78年に発生した宮城県沖地震以降からです。

転倒したビルが完成した74年時点では、まだ杭基礎の耐震性はあまり考慮されていませんでした。

楠教授は考察によると、

被害状況から、当時としては一般的だった工法が作用されおり、杭は建物の基礎梁に強固につながっていなかったと考えられるとされています。

あなたの家は無関係か!?

日本の建物基礎設計の真実

今回の転倒ビルは建設年が74年であり、かなり昔に建設されていることが、大きな被害に繋がった1番の要因でしょう。

では、もっと最近の建物で同じ様なことは起きないと言い切れるのでしょうか?

結論は、冒頭述べたとおり「同様に横倒しになる確率は低いが、財産価値の毀損は大いに考え得るです。」

理由は、日本の多くの建物の基礎は、大地震までを踏まえた設計をしていないからです。

日本の建物の設計は、建築基準法に則って設計されますが、その第1条(目的)において、

「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする」としています。

つまり、生命や財産保護のために必要最低限のことしか法律では規定しないとしています。

それを叶える為に、日本の建物の構造設計は一次設計と二次設計と言う2段階で行うよう法律化されています。

一次設計の目的が、

「建物が存在する期間の間に数度起こ得る中地震に対して、建物の性能を損なわない」

二次設計の目的が、

「将来の大規模な地震でも安全性を損なわない(人命を失うことは避ける)」です。

しかし、それは建物の上部構造(土より上)の話であり、

実は建物の基礎に関しては、法律に規定されている内容は一次設計に相当する内容のみです。

二次設計にあたる部分の内容は設計者個人の判断に任されています。

何故、建物上部構造と基礎でそのような違いがあるかというと、

そもそも二次設計は、過去の地震被害から人命に影響のある著しい被害形態を分類・抽出し、それを防止するための規定を設けたためです。

一方基礎については、

「基礎の被害が原因で人命が損なわれた例はない」

ものとされており、杭が折れたりするなど被害があっても人命には影響がなく、原因は建物設計ではなく地盤の安定性に起因するものとされているのが、日本の構造設計者での常識・感覚です。

つまり、設計者は、建物基礎について、二次設計した場合でも地盤側の安定性を全て考慮できるわけでもないし、仮に被害があっても人命に影響はないと考えており、一般的に二次設計はしなくてよいと考えているわけです。

また、基礎の二次設計には、技術的な課題も多く近年においても法律化できるほどの設計法は確立されておらず、近年においても研究段階にあります

【参考】「大地震に対するコンクリート杭および杭頭接合部の性能評価と2次設計法の提案」

そういった中でも、建築学会の「基礎設計指針」では、一定の二次設計方法が提案されており、重要施設や超高層ビルなどでは、設計者が自ら検討しているケースもあります。

しかし、例えば、マンションの場合、マンションディベロッパー達は、基礎の二次設計を行うことによる費用分だけ、販売価格に跳ね返り、競争力を失うので、そこに積極的に踏み込むことはしません。

つまり、マンションの殆どは基礎の二次設計されていないということです。

真実をどのように受け止めるべきか

では、上記であるとして、どうすればよいのでしょうか。

それは、「地盤の良い地域を住まいにする」これにかぎります。

よい地盤を探すためには、防災科研が公開していくれている

「J-SHIS MAP」

を利用して、周辺地盤の状況を確認されるのが良いでしょう。

ただし、住まいを考えた場合、「安全性」だけが住居の場所を決定するわけではないでしょう。

「利便性」や「周辺環境」、場合によっては、「街のステータス」を気にする人もいるかもしれません。

ここで理解しておきたいのは、

ご自身がどこに重きを置いて住まいを決めているか?

住む場所によっては、住まいの資産価値を大きく損なうリスクがあるが理解できているか?

たまに、マンションパンフレットで「杭基礎を採用!!」などと書いてメリットのように売り込んでいる場合がありますが、「ここは表層の地盤が良くないです!!」と言っているのと同じだと思ってください。

住むところにかけるお金は、広い意味でいうと「不動産投資」です。

あなたは、リスクをどの程度理解して「投資」できているか、今一度考えてみていただけたらと思います。

まとめ

能登半島地震で転倒したビルは古い年代に建てられていて耐震性が十分とは言えなかった

杭の引き抜けたことが主な転倒の原因

日本の基礎設計では、大地震をターゲットととした設計は法律化されていない

今の建物でも今回の被害が無関係とはいえない

住まいを考える場合でも地盤が良い場所を選ぶのは不動産投資として合理的

地盤は「J-SHIS」などで簡単に確認できる

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