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その充填、アウトかも!? 2025-6-30国交省警告で読む断熱材認定不適合“3分”処方箋

2025年6月30日、国土交通省は「大臣認定を取得した防耐火構造の外壁等について 認定仕様に記載のない断熱材を充てんして建築することに関する注意喚起」を通知しました。

省エネ適判強化で充填断熱の需要が急増する一方、外壁の防火・耐火「大臣認定」は断熱材が充填されていない仕様が多いです。

このギャップが現場での不適合多発を招いているます。

本記事では、注意喚起の背景と要点を押さえつつ、若手技術者が設計段階から完了検査まで迷わないよう、実務チェックリストや事例を交えて解説します。

この記事でわかること

  1. 断熱材と防耐火「大臣認定」の基礎知識
  2. 2025年6月30日 国交省注意喚起の背景と通知内容
  3. よくある不適合パターンとリアル事例
  4. 設計・施工で必ず押さえる7つの実務ポイント
  5. 「こんな時どうする?」最新QAの読み解き

目次

そもそも「大臣認定」とは?

「大臣認定」は建築基準法第68条の25にもとづき、国が防火・耐火・遮音など特定性能を保証する材料・構法の「組合せ」を審査し、認定番号で示す制度です。

ポイントは以下の3点です。

①性能を示すのは単品の材料ではなく、厚さ・密度・留め付け間隔・下地材まで含めた“仕様一式”であること

②認定書の別添図書に1ミリでも外れる施工をすると適法性を失うこと

③PC、QFで始まる番号は防火構造・準耐火構造を示し、9000番台は旧告示の移行認定で読み替えに注意が必要なこと

現場では「認定番号がある材料を使えば安心」と誤解しがちですが、実際は図面・施工計画に認定書の細部を逐一転記し、資材変更時は改めて適合可否を確認する地道なプロセスが欠かせません。

なお、大臣認定は防火区画の耐火時間を保証するもので、省エネや結露性能など断熱材本来の熱特性は別途JISや性能評価で担保される点も混同しないよう注意が必要です。

なぜ今、断熱材で“認定不適合”が多発しているのか?

2-1 省エネ適判強化で「充填断熱」ニーズ急増

今回国土交通省が通知を出した背景には、断熱材充填による耐火認定の不適合が多発していることがあります。

2025年4月に省エネ適合義務の対象拡大が始まり、外皮性能をかさ上げするため木造でも鉄骨でも“空洞にグラスウール等を追加したい”という需要が急増し、断熱材の充填が行われています。

2-2 通知の概要

国交省は6月30日付で各都道府県・確認検査機関等へ以下を周知しました。

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_fr_000186.html

  1. 認定仕様に断熱材の記載がない外壁へ充填する場合、事前に
    • 指定性能評価機関で試験
    • 断熱材を含む形で新たに大臣認定を取得
  2. 手続きを飛ばして施工すると認定不適合⇒建築確認取消や是正命令のリスク
  3. 改修工事でも同様に事前認定が必要

7月4日・9日公表のQAでは、9000番台移行認定など“グラスウール→ロックウールは可?”などの細部も解説されています。

特に木造・軽量鉄骨の低層住宅は図面変更が現場に伝わりにくく、瑕疵保険調査で不適合が露見しがちですので十分に注意しましょう。


現場で起きた“ヒヤリ事例”

実際に起きた認定不適合の典型例を取り上げ、原因分析と是正コストを比較しながら教訓を抽出します。

A社木造アパートでは、防火構造 PC030BE-9201が“無充填仕様”であることを見落とし、壁内にロックウールを充填した結果、完了検査直前に全壁解体・再施工となり、工期2週間超過・追加費用約300万円という痛手を負いました。

B社S造倉庫でグラスウール指定を高密度ロックウールへ現場判断で差し替えた事例では、QF045BE-9226の別添にロックウール仕様が含まれていたため適合と判断され、セーフ。

これら事例からの教訓は、下記の3点。いずれも基本的なことですが、重大なエラーにつながるので徹底しましょう。

①認定書別添を必ず確認

②材料差替えは即設計者に報告

③確認検査機関と事前協議を徹底

ケース構造誤った対応想定される影響
A社木造アパート防火構造 PC030BE-9201内装側にせっこうボードを張る際、壁内へロックウール50 mmを追加したが認定書は充填なし仕様認定外→完了検査で指摘、壁解体&再施工
B社S造倉庫準耐火構造 QF045BE-9226グラスウール指定に対し「性能が高いから」と高密度ロックウールへ変更当該認定はロックウールも可とQAで追認→セーフ(事前照会が鍵)

若手技術者のための実務チェックリスト7

  1. 認定書別添を必ず原本確認
    • PDFや写しを鵜呑みにせず最新版を建材メーカーへ請求。
  2. 断熱材欄の“空白”はNGのサイン
    • 記載が無い=無充填仕様。追加したい場合は新規認定へ。
  3. 性能評価→新規認定を最短3〜6か月前倒しで手配
  4. 改修現場も“確認申請不要”と油断しない
    • 充填断熱を入れるだけでも認定取得が必要。
  5. 移行認定(9000番台)を扱う際はQAを参照し疑義解消
  6. 設計変更時は確認検査機関へ“事前相談”
    • 「認定外なら是正」か「認定OK」か書面で回答をもらう。
  7. 現場へ“仕様変更禁止”を徹底周知
    • 特に断熱工事業者へ認定番号と断熱材品番を掲示。

こんな時どうする? 最新QA抜粋

国交省はQ&Aとして「現場で迷ったらここを参照」という実践ガイドラインとして整理している。

日々更新されているため、こちらのリンクの下方にある、Q&Aの情報を確認するようにしましょう。

質問国交省回答(要旨)
グラスウール→ロックウールは同等以上性能だがOK?試験済みで認定にロックウールが含まれる場合のみ可。含まれない場合は新認定を取得。
屋内側(非加熱面)の被覆追加は認定外?屋内側は適用範囲外のため不適合扱いしない。
移行認定で仕様が“例示的”にしか書かれていない認定班へ個別照会し判断を仰ぐ。

まとめ

2025年6月30日の国交省注意喚起は「省エネで断熱材を入れたら防耐火の大臣認定を外れる」という現場リスクを浮き彫りにしました。
本記事では、大臣認定の基礎、通達の真意、ヒヤリ事例、7つの実務チェック、最新QAを網羅。
要点は3つだけ──①認定書別添を原本で確認、②断熱材を変えるなら新認定か事前協議、③現場の“うっかり差替え”を仕組みで封じる。
これさえ押さえれば、省エネと防火を両立しつつ無駄な是正工事や追加コストを回避できます。忙しい若手技術者も、今日から自現場に当てはめてリスクゼロ運用を始めましょう!

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