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一級建築士試験対策_これでわかる!保有水平耐力計算をざっくり解説

一級建築士試験のために保有水平耐力計算を勉強する場合、全体像が説明されず、何をやっているかわからなくなるということがよくあります。

全体像がわからずに問題を解いても、丸暗記だけでは、少し違った選択肢で出題されると間違えてしまいます。

ここでは、保有水平耐力計算が他の計算法と考え方が根本的に違うことを理解して、何をやっているかをざっくり理解できるように解説します。

この記事を読めば、全体像をイメージでき、試験問題にかかわらず回答できる応用力を付けることができます

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目次

保有水平耐力計算は結局何をしているか?

さて、まず最初に、保有水平耐力計算は結局何をしているかというと、

保有水平耐力Qu≧必要保有水平耐力Qun

この不等号が成立するかどうかを確認する。それだけです

そのために、色々な工学的な考え方を用いて計算のやり方(ルール)を決めているわけです。

では、少しずつ解説します。

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許容応力度計算との違いは?

まず、ルート2までに行ってきた許容応力度等計算との違いを理解します。

一般的にイメージする構造解析は、

「建物モデルに地震力を作用させて、その時の建物の挙動や各部材に作用する力を計算・シミュレーションし、部材が許容できる強度以下に収まっていることを確認する。」

といったような内容でしょう。

このような考え方に近いのが許容応力度等計算です。

一方、保有水平耐力計算は、

設計者が考える建物が変形してよいと考える範囲まで建築を強制的に変形させた時に各部材が負担する水平せん断力の総和が、建築物が崩壊に至るまでに許容できるエネルギーを考慮して決めた合格ライン(必要保有水平耐力)を超えていることを確認する。」

というイメージです。

許容応力度等計算が各部材に注目しているのに対し、保有水平耐力計算は建築物が持つ耐力の総和に注目しています。

なので、保有水平耐力計算を考えるときはルート2までの計算とは全く別の考え方であるということを理解して、頭を切り替えましょう。

設計者が考える建物が変形していい範囲ってなに?

ここで、「設計者が考える建物が変形してよいと考える範囲」が意味不明かと思うので解説します。

静的な構造計算の場合、建物に地震が起きた場合を想定した力の分布で、どんどん建物を横向きに押していくようなイメージで計算しています。

そのように押された建物はどんどん横方向に変形していき、やがて壊れます。

その「壊れる」というのが、構造計算ソフトの中でガラガラと建物が壊れるのではなく、

水平変位÷階高で算出した変計角というものが、一定の範囲を超えたときに「壊れた」と判定します。

この範囲を設計者が判断して設定するわけですが、ここで紛らわしいのですが、設計者は保有水平耐力計算において、

建物が変形してよいと考える範囲」と「建物が崩壊する変形」の2つの変形を定義します。

詳しくは難しくなるので、割愛しますが、ざっくりいうと

建物が変形してよいと考える範囲」が、保有水平耐力計算の上記に書いた不等号比較する時の変形

「建物が崩壊する変形」が、下記に示すDs(構造特性係数)を算出する際に用いる変形

です。

合格ライン(必要保有水平耐力)の決め方

さて、保有水平耐力計算が、建物の部材耐力の総和に注目していると考えると、各部材耐力をどんどん大きくすればいいということになります。

それは、壁やブレースを増やしたり、柱や梁のサイズを大きくするということになりますが、建築計画や経済的に合理的でないことも考えられます。

そこで、合格ライン(必要保有水平耐力)を下げるという方法が考えられます

では、ここで必要保有水平耐力の計算式を見てみます。

必要保有水平耐力Qun=Ds×Fes×Qud

Ds:構造特性係数 Fes:形状係数 Qud:Co≧1.0とした地震層せん断力

Qudは許容応力度等計算の地震力の計算の時に出てきた、

Q=Z・Rt・Ai・Co・Wi

の式と同じです。

形状係数Fesは、剛性率や偏心率の数値が悪く、バランスの良くない建物に対するペナルティで、合格ラインを引き上げる係数です。

なので、合格ラインを下げようと思うと、バランスの良い建物を作ればよいことになります

最後に、構造特性係数Dsがこの計算の胆ですが、これは、靭性に優れた、粘り強い建物に対するボーナスで、必要保有水平耐力を低減できる係数です。(ここが一番試験に出ます。)

この係数を求めるやり方の具体的な方法は、構造一級建築士試験の範囲なので、一級建築士試験にはあまり出題されません。

覚えておくべきは、

「靭性がよくなる(変形能力が上がる)とDsは小さい数値にできて、合格ラインが下がる」

ということです。

まとめ

保有水平耐力計算は、建物全体が持っている耐力値が合格ラインを超えているかどうかを確認しているだけ

(一個一個の部材の安全性を確認しているわけではない。)

合格ラインの決め方に建物のバランスや、靭性(変形能力)の評価が関わっていて、

バランスが悪い建物は、合格ラインが上がる

靭性が高い建物は、合格ラインが下がる

この合格ラインが上がる、下がるの部分が試験で一番出るので要注意。

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