一級建築士試験の構造分野において、荷重・外力の項目は毎年およそ2問ほどが出題されます。
その中で、地震力の数値を決めるうえで重要な「振動特性係数」は、出題率が高く、理解することが直接的に点数に影響してきます。
しっかり理解して、点数につながて行きましょう。
一級建築士試験以外にも建築構造の考えの大事な部分です。
地震力の算定式における振動特性係数Rtの位置づけ
まず、振動特性係数がどういった場面で出てくるものかというと、
構造計算において、建物に作用する地震力を算定する時です。
構造計算する際に、建物に作用する地震力は下式により算出します。
$ Ci=Z・Rt・Ai・Co $
ここで、
Ciは第i層の層せん断力係数、Zは地震地域係数、Rtは振動特性係数、Aiは層せん断力係数の高さ方向の分布を表す係数、Coは標準せん断力係数です。
地震力を算定する式の掛け算の一つの要素なので、Rtは非常に重要な値であることがわかります。
なお、RtやAiはまた別の式により算出され、
理解することが建築士としても重要になることもあるため、比較的出題率が高い傾向にあるようです。
振動特性係数Rtとは
振動特性係数Rtは一言でいうと
「設計する建物と建設地の地盤の共振の度合を反映するための係数」
です。
建物や地盤にはそれぞれ個別に揺れやすい周期(テンポ)があります。
建物と地盤の揺れやすいテンポが近似していると、それにより地盤の揺れが、直接的に建物に伝わり、揺れが増幅します。
それを「共振」といい、振動特性係数Rtはその度合を計算に反映するためのものです。
振動特性係数Rtは、建築基準法には
「建築物の振動特性を表すものとして、建築物の弾性域における固有周期及び地盤の種類に応じて国土交通省が定める方法により算出した数値」
とされています。
ここで、
「弾性域」とは、建物が過去の地震などによりダメージを受けていない健全な状態です。
「固有周期」とは、その建物の揺れ方を表すもので、建物ごとに違ったものになります。
「地盤の種類」とは、地盤の締まり具合の違いを表すもので、第一種から3種までの3種類があります。
つまり、振動特性係数とは、
「新築時点での建物ごとの揺れ方の違いと、地盤の締まり具合の違いにより、大きさが変わる係数」
振動特性係数Rtのおさえどころ
上記のような意味あいの振動特性係数Rtについて、建築基準法では下記の式が規定されています。
式だけを見ても良くわからないので、図にしてみると以下になります。
図を見ると、周期が大きくなるにつれて、地盤によってRtの値に差が生じます。
地盤は、第1種地盤が固い(一般的に良い地盤)、第3種地盤がやわらかい(一般的に良くない地盤)
とされており、地盤がよいとRtの値も小さくなる傾向にあることがわかります。
一級建築士試験の対策としては、
・全体的な傾向として、建物の高さが高く、建物の固有周期が大きいときは、Rtは小さくなる。
・地盤には、第1種から第3種まであり、第1種が良い地盤・第3種が良くない地盤である。
・良い地盤であるほど、Rtの値が小さくなる傾向にある。
の3点をしっかり覚えます。
意外と地盤は1種と3種のどちらが良い地盤だったかがわからなくなってしまいがちです。
そんな時は、上記の図を色と一緒に絵的に覚えておくと、記憶定着につながるはずです。
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