脱炭素のキーワードが飛び交ういま、鉄鋼も例外ではありません。
「電炉 vs 高炉って何が違うの?」「東京製鐵の“ほぼゼロ”って結局スゴいの?」――そんな疑問をまとめて解消しつつ、そのまま社内報告に貼れるテンプレまで用意したのが今回の記事です。あなたが会社からレポートを求められる日も遠くはないはずなので、サクッと読んで“即提出”できる武器を手に入れてください!
電炉材 vs. 高炉材 ─ まずはここを押さえよう

鉄鋼は製造法で大別すると、高炉と電炉の二系統があります。
高炉は鉄鉱石とコークスを高温で溶融し転炉で鋼にする一貫プロセスで、大量生産と高品位材に強い半面、石炭燃焼由来の排出が重く CO₂ は平均2 t/t前後です。止められない巨大設備ゆえ脱炭素対応には巨額投資が必要です。
一方、電炉はスクラップを電気アークで再溶解するリサイクル型です。設備が小さく起動停止が自在で、再エネ電力を組み合わせれば排出は0.4〜0.7 t/tに抑制可能です。近年は精錬と不純物管理が進歩し、建築用H形鋼や高張力鋼板でも品質差は急速に縮小しており、高規格材を含めると建築で使えない部分は事実上殆どなくなってきたという段階でしょう。
項目 | 電炉 | 高炉 |
---|---|---|
主原料 | スクラップ | 鉄鉱石+コークス |
熱源 | 電気アーク | 石炭燃焼・酸素吹き |
典型的CO₂排出係数* | 0.66 t-CO₂/t(世界平均スクラップEAF) | 2.2 – 2.33 t-CO₂/t(世界平均BF) |
品質面 | 不純物管理が鍵だが近年はJIS・AWSとも全グレード対応可 | ハイグレードは依然強み |
キャパ&コスト | 設備費小・起動停止が柔軟 | 大規模一貫生産・安定供給 |
*数値は「Cradle-to-Gate」基準。再エネ電源の比率で変動。

“低CO₂鋼材の最前線”――東京製鐵「ほぼゼロ」のインパクト

国内最大級の電炉メーカーである東京製鐵が、2024年7月に市場投入した低CO₂鋼材「ほぼゼロ」は、従来電炉材の排出係数0.4 t-CO₂/tを0.1 tまで引き下げ、電炉技術の限界を押し広げた“電炉鉄鋼の最前線”ブランドです。
電炉材の場合、電気を大量に消費するため、その電力がどのように生み出されるかがCO₂削減の観点では重要です。
今回、「ほぼゼロ」では、FIT非化石証書と再エネ電源指定証書で電力を実質100%グリーン化を行っています。
その他、太陽光などが発電し過ぎて電力が余る春・秋の昼間時に、電力会社の要請を受けて“わざと電気を使う”ことで出力抑制を防ぐ運用や、自社の太陽光発電などによりCO₂削減を実現しています。
価格プレミアムは+6,000円/トンであり、高炉材と一般的な電炉材のトン単価差が凡8,000円/トンであるので、許容範囲に収まる。
発売後1年弱で契約100件・約4,000tを受注し、ZEB取得やScope 3削減を急ぐ施主の“即効薬”として採用が加速している
項目 | スペック |
---|---|
発売日 | 2024年7月1日 |
CO₂排出係数 | ≒0.1 t-CO₂/t(従来電炉材0.4→▲75 %) |
価格プレミアム | +6,000 円/トン |
削減手法 | 非化石証書/上げDR/自家PV20 MW |
実績 | 1年弱で成約100件超・4,000 t強 |

競合グリーンスチール早見表

メーカー | ブランド | CO₂係数 | 削減ロジック | プレミアム |
---|---|---|---|---|
東京製鐵 | ほぼゼロ | 0.1 t | 非化石証書+DR+PV | +6,000 円/t |
大和工業 | +Green™ | オフセット方式 | オフセット+REC | 非公表 |
神戸製鋼 | Kobenable® Steel | 0.9 t | マスバランス高炉 | 非公表 |
2024年4月に大和工業グループのヤマトスチールが発売した環境配慮型鋼材「+Green™」は、電炉由来の実排出は残したまま、森林系J-クレジットと非FITの再エネ電源指定証書で相殺し、“実質ゼロ”をうたうオフセット型商品です。
オフセット量はISO14064-3で第三者検証を受け、出荷時に「カーボンクレジット償却証明書+REC証書」が添付されます。
一方、多くのLCAソフトはオフセットを排出削減と認識しないため、係数を0.4 tのまま入力するケースがある点に注意が必要。
神戸製鋼所が2022年5月に商品化した「Kobenable® Steel」は、高炉由来鋼材に低炭素ラベルを割り当てる国内初のマスバランス型商品です。
石炭で鉄鉱石をゼロから還元する代わりに、天然ガスで事前に“半分できあがった鉄”を作り、それを高炉に入れて石炭を節約します。
こうして浮いた CO₂ 削減量を帳簿上で指定バッチの鋼材に割当てたのが「Kobenable Standard/Premier」。
実排出は高炉平均 0.9 t-CO₂/t 前後残るものの、削減分を証書化して低炭素タグを付ける仕掛けです。
コピペOK!報告書テンプレ(電炉vs高炉比較入り)

金融庁は開示義務化のスケジュールを検討しており、2027年3月期から段階的にプライム上場企業に対し、開示を義務付ける方針です。

あなたが会社からレポートを求められる日も遠くはないはずなので、下記にレポートのドラフトを記載します。
参考にして、業務効率化を図ってください。
低CO₂鋼材「ほぼゼロ」社内報告書(ドラフト)
| 報告書番号 | | 作成日 | 2025-07-08 |
|------------|--|--------|------------|
| 作成者 | (所属・氏名) |
## 0. 要約
東京製鐵の低CO₂鋼材 **「ほぼゼロ」** は
- 製造段階排出 ≒0.1 t-CO₂/t (従来EAF0.4 t→▲75 %)
- 価格プレミアム +6,000 円/トン
- 既契約100件超・4,000 t強
当社案件でも **LCA値大幅減** と **コスト影響0.1–0.3 %** を確認し、採用を推奨する。
## 1. 電炉 vs 高炉 概要
| | 電炉(EAF) | 高炉(BF) |
|--|-------------|------------|
| 原料 | スクラップ中心 | 鉄鉱石+コークス |
| CO₂排出 | 0.66 t-CO₂/t(世界平均)/0.1 t(ほぼゼロ) | 2.2 t-CO₂/t |
| メリット | 低炭素・柔軟操業 | 大量生産・高級鋼 |
| デメリット | スクラップ需給・不純物管理 | CO₂多・初期投資大 |
## 2. 製品詳細
- 削減手法:非化石証書+上げDR+自家PV
- 証明書:出荷証明+環境価値証明(SOCOTEC)
## 3. リスク・留意点
1. スクラップ市況によるプレミアム変動
2. 非化石証書単価上昇
3. マスバランス製品との算定基準差
## 4. 当社アクション(案)
| 優先度 | 内容 | 期限 |
|--------|------|------|
| ★★★ | 設計標準仕様に「低CO₂鋼材 ≤0.15 t-CO₂/t」新設 | 2025 Q3 |
| ★★☆ | 見積書に「CO₂/円」指標を追加 | 随時 |
まとめ
- 電炉材はスクラップ×電気で低炭素、高炉材は石炭大量使用でCO₂が大きい
- 東京製鐵「ほぼゼロ」は電炉材をさらに0.1 t-CO₂/tまで圧縮し、+6,000 円/ tで導入しやすい
- 大和工業+Green™はクレジットで“実質ゼロ”、神戸製鋼Kobenable®はマスバランスで段階削減
- 上げDRや自家PVで再エネを直接使う仕組みも要チェック
- 記事内テンプレをコピペ→案件名と数量を差し替えれば、明日すぐに社内提出OK!
これであなたも脱炭素報告の“先回りエース”。次の定例会議で早速使ってみましょう!

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