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【実務に役立つ】免震建物は敷地境界からどのくらい離れればOK?計画初期に一番悩むポイントをわかりやすい解説!

大きな地震の後には免震建物が注目されます。

建物をいかに免震建物で計画するかについて、初期段階で下記のような悩み出てきます。

「免震建物はどのくらいの敷地境界から離す必要があるか?」

これは、建物の位置を決めるために、非常に重要な事項で、計画の根本に関わります。

今回はこの悩みについて、ペンギンが考えている押さえどころを解説します。

この記事を読めば、免震建物の初期計画の精度を確実に向上できます!

目次

よくある質問「この敷地で免震建物が計画可能か?」

大地震発生後の建物計画において、耐震性を高める為に、計画の初期に来る相談が

「この敷地で免震建物が計画可能か?」というものです。

この質問は、色んな要素が含まれていて、「場合によります。」と答えたくなりますが、すごく協力的に解釈して、「免震建物はどのくらい敷地境界から離せばいいか教えてもらえますか?」と読み替えて考えてみます。

これも「場合によります」が、

最初に結論から言うと、少なく見積もっても2500mm前後は必要でしょう。

免震のクリアランスは500mm~700mmくらいなのになぜそんなに大きな数値になるのでしょう。

エキスパンションジョイント(EXP.J.)

「免震建物はどのくらい敷地境界から離せばいいか?」を考えるときのポイントが下記です。

・構造クリアランス

・免震エキスパンションジョイントの製作寸法

・可動スペース

・境界付近の工作物寸法と施工性

構造クリアランス

免震建物では、構造設計者が免震建物と地球側にある建物部材との離隔(構造クリアランス)を計算します。

この数値は、建物計画ごとに異なりますが、凡そ600mm程度に設定して免震装置の配置や種類を設計します

クリアランスを小さくしようとすると、免震層を変形しづらくする(固くする)ので、免震効果が下がります。

逆に、クリアランスが大きすぎると、免震装置が変形に追従できなくなってきます。

そこで、いい塩梅になるのが凡そ600mm程度であり、建物計画により前後100mm程度で調整することが多いです。

免震エキスパンションジョイント(免震EXP.J.)の製作寸法

次に、押さえておきたいのが免震エキスパンションジョイント(以下免震EXP.J.)についてです。

構造クリアランス部は、免震建物と地球側の部材に隙間が生じますが、人が通過する場合、足を引っかけたり物を落としてしまったりしてはいけません。

その隙間を埋めるために設置するのが免震エキスパンションジョイント(以下免震EXP.J.)です。

敷地境界からの離隔について、感覚のズレの要因の一つがこの免震EXP.J.の製作寸法です。

免震EXP.J.は、構造計算で決めた構造クリアランス分の寸法があればよいと考えがちですが、実際には収まりなどを考慮すると、下図のように構造クリアランスよりも少し大きめに製作されています。

図は構造クリアランス600mmに対して製作された免震EXP.J.ですが、下地部材などを含めて1485mmとなっています。

免震が動いた際に免震EXP.J.のパネルが構造クリアランスに落ちてはいけないので、構造クリアランスの2倍以上のサイズで製作される必要があるため、こうなるわけです。

なお、EXP.J.の基本は、ABC商会さんのHPを読めば、ばっちり押さえられます。ぜひ参考してください。

基本事項から勘所まで網羅的に記載されていて、最初はEXP.J.の記事を書こうと思ったのですが、これを読めばペンギン不要!と思わせる内容でした。流石!

可動スペース

免震EXP.J.にも関連しますが、「可動スペース」というのも考慮が必要です。

地震時に建物が動いて、構造クリアランスが狭くなる動きをした場合、免震EXP.J.の金具は、大きく外側にせり出すため、その分のスペースを見込み必要があります。

その分のスペースを「可動スペース」と呼んでいます。

可動スペース部分に、敷地境界や工作物がある場合は、地震時に衝突してしまう恐れがあるため、計画としては好ましくありません。

境界付近の工作物寸法と施工性

最後に、気を付けたいのが敷地境界付近の状況です。

可動スペースまでを考慮するだけでも、600mmの構造クリアランスに対して、3倍以上のスペースが必要になりました。

しかし、仮に、隣地に建物がある場合、フェンスなどの工作物を作ることが通常です

また、可動スペースの部分は、平滑に保たれる必要があるので、コンクリート舗装などを施すことが多いです。

その場合、排水ルートを確保する為に、敷地境界線に沿って側溝を設けるなども考えられます

また、場合によっては、地下部分を構築するのに山留が発生することもあります

そう考えると、可動スペースの先がいきなり敷地境界線となるケースは結構稀です。

まとめ

今までの数値をまとめると、

免震EXP.J.の製品幅(構造クリアランス内包)+可動スペース+外構部=2500mm前後

内訳は、

構造クリアランス600mmの製品だと、免震EXP.J.の製品幅は凡そ1500mm

可動スペース(=構造クリアランス)が600mm

外構部の収まりはかなり小さく見積もって400mm

となります。

特に、外構部の収まりは、周辺の隣接状況、敷地の高低差などにより、大幅に変わるの要注意です。

免震建物を計画する際には、上記の数値を意識して、初期計画の精度を上げていきましょう。

メーカーさんでも、小さい製作幅・可動スペースとなる商品をラインナップとして出してくれています。
その他、中間階免震にするなど、小さな敷地でも免震建物は計画できる可能性はありますが、上記の考え方はぜひ頭に入れておきましょう。

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