鋼鉄製造のプロセスにおいて、高炉材と電炉材は鋼鉄の生産において鍵を握る材料です。
脱炭素社会の実現に向けて、この二つの材料の違いの理解を求められる場面は、今後非常に多くなると思われます。
この記事では、高炉材と電炉材の違いとその製造プロセスから発生するCO2排出量に焦点をあて、
鋼鉄製造の持続可能な未来に向けた考察を行います。
これからは、「この2つの材料の違いを知っているのは常識。」と言われる社会になるかも知れません。
この記事を読んで、理解を深めましょう
1.高炉材と電炉材の違いは?
1.1 原材料と製造プロセス
高炉材は主に鉄鉱石をベースに製造されます。
鉄鉱石、焼結鉱、およびペレットが主な原材料で、高炉内でこれらが高温で反応させ、鉄を取り出します。
これを「製銑(せいせん)」といい、そこで作られるものを「銑鉄(せんてつ)」といいます。
その後「製鋼(せいこう)」という工程で、銑鉄の中の不純物を取り除き、製品にしていきます。
プロセスは大規模かつ効率的であり、多くの鋼鉄メーカーが採用しています。
一方、電炉材の原材料は主にスクラップ鉄の中から再利用可能な素材を使っています。
電炉材では、製銑の工程はなく、電気アーク炉でスクラップを溶かしつつ、不純物を取り除きます。
それ以降の工程は、高炉材と同じです。
つまり、高炉材と電炉材の違いは、「原材料」と「製銑の有無」のみとなります。
1.2 電炉鋼材と高炉鋼材の化学成分の違いは?
高炉材と電炉材にどの程度の違いがあるかについて、化学成分の違いに着目したいと思います。
イメージしづらいかも知れませんが、「鉄」は化学成分を調整することで、性能をコントロールしています。
そう意味では、一種の化学合成品といっても過言ではない代物です。
つまり、化学成分の違いに着目すれば、その製品の違いがわかるというわけです。
高炉材と電炉材の最も異なる点は、電炉材にはスクラップ由来の Cu,Ni,Cr等が含まれることです。
では、その元素たちがどの様な特徴を持っているかというと、
Cu:製品製作時の割れのリスクを上げるため、製造に工夫を要します。
但し、正しく加工すれば耐候性を向上するのに有効な元素です。
Ni:強度・靭性の双方に有効な元素です。
Cr:耐酸化性・耐食性に有効な元素です。
見る限りは悪さをするイメージはありません。
但し、多く混入されると悪い影響を及ぼす可能性もあります。
これらの元素の混入量を適切に管理する必要があります。
利用者は、その管理が適正に行われていること、エビデンスがあることの確認が必要です。
また、主に鋼材の特性を決定すると言われる「C、Si、Mn、P、S」については、
高炉材と電炉材に差はないように成分調整されます。
一般的には、電炉材の方が吸収エネルギー値が低いとされていますが、
昨今ではシャルピー衝撃値を70J以上確保した高規格電炉材も製品化されており、
建築で使用するうえでの技術的なハードルはなくなりつつあります。
2. CO2排出削減について
2.1 鉄鋼業界の日本全体に占めるに二酸化炭素排出比率は?
鉄鋼業界の二酸化炭素排出量は、日本全体の約14%を占めます。
産業部門の中では最も高い業種です。
そのため二酸化炭素低減が最も必要な業種となっています。
2.2 高炉材と電炉材のCO2排出量の視点からの比較
高炉材の製造にはCO2排出が伴います。
製銑の工程において、鉄鉱石を溶かすために高温で燃焼する際、石炭やコークスなどの燃料が必要であり、これが大気中にCO2を放出します。
その量は1tの鉄をつくる場合で約2tと言われています。
一方、電炉材の製造プロセスは、高い炉材よりもCO2排出量が少ないとされています。
主な理由は、製銑の工程がないので直接燃焼プロセスが少なく、電力を使用して製造されるためです。
その量は、1tの鉄をつくる時に発生する二酸化炭素の量は約0.5tで済むとされています。
また、主原料輸送工程のCO₂排出量は、電炉が高炉の1/35~1/125とされています。
理由は、電炉材の原材料となるスクラップは国内で簡単に手に入れることが出来るためです。
実は、日本では都市鉱山として蓄積された鉄スクラップが大量にあるにもかかわらず、
その鉄スクラップがリサイクルされていないことです。
電炉鋼材比率を国別にみると、日本は約24%であり先進国の中でも低い割合となっています。
今後、スクラップ資材をリサイクル資源として利用した電炉材の活用が求められます。
このような比較から考えると、脱炭素という観点では圧倒的に電炉材が優位です。
しかし、気を付けたいのは、電炉材を作るために使われる電気を作るために、
二酸化炭素を大量に発生させている可能性があることです。
電炉材を利用することによる脱炭素効果を表すには、
電炉の電気がどの様な過程で作られたものかを確認することが大切です。
3. まとめ
高炉材は非常に高効率な生産能力を活かして、世界の鋼鉄製造を支えてきました。
しかし、脱炭素社会の世界情勢を受けて、電炉材への注目度が増しています。
これまでは、スクラップの再利用品という認識のもと、嫌煙する利用者も多かったですが、
技術的な課題を克服しつつあり、今後しばらくは獲得の競争化が懸念されるほどです。
ですが、
利用者は、電炉材を製作するための電気がクリーンなものであるかも、視点として重要です。
また、高炉メーカーも水素を原料とした新たな取り組みを始めており、今後更なる技術革新が待たれます。
今回の記事は東京製鐵さんのHPを参考に作成しました。
非常に丁寧に解説されているので、より詳しく確認したい方は、
こちらのHPをご確認ください。
https://www.tokyosteel.co.jp/assets/docs/products/qa.pdf
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