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現代のトイレ設計:実践的なアプローチ解説と事例多数の書籍紹介

現代の建築設計では、トイレの快適性と機能性は、利用者の満足度に直結する重要な要素です。

公共施設、オフィスビル、商業施設など、多くの人が利用する場所において、トイレの設計は、施設設計成功を左右するクリティカルなポイントとなります。

この記事では、空調調和・衛生工学会が提唱する「衛生器具の適正個数算定法」を基に、トイレ設計の基本から応用までをわかりやすく解説します。

さらに、トイレ設計における最新のトレンドと基本を学ぶのに最適な書籍もご紹介します。

目次

トイレ器具数設計の基本

空調調和・衛生工学会の「衛生器具の適正個数算定法」について

トイレの器具数について、最も多く用いられているのが、

空調調和・衛生工学会の「衛生器具の適正個数算定法」です

この算定方法では、「建物用途」「想定人数」「男女比率」「待ち時間の評価によるサービスレベル」のパラメータから器具数が算出されます。

建物用途は自明ですが、「想定人数」「男女比率」「待ち時間の評価によるサービスレベル」のそれぞれの設定については、下記の通り行われることが多いように思います。

「想定人数」

・固定座席などがある(劇場やレストランなど)は、その座席数(場合により+α)

・上記以外は、対象面積(㎡)×0.1(人/㎡)で評価する

「男女比率」

これは、時代によっても変わりますが、「男:女」=「7:3」or「6:4」or「5:5」です。

近年は「5:5」に近づく傾向にあります。

「待ち時間の評価によるサービスレベル」

これは、レベルが下記の3段階あります。一定規模以上の建物では、殆どレベル1を選択します。

レベル1は待つことが少ない良好なレベル
レベル2は標準的なレベル
レベル3は最低限のレベル

これらを決定したパラメータから下記のような表から各器具数を決定します。

近年の設計では、特に女子の便器数は、レベル1の算定結果に+αする傾向が多いようです

(参考図書:ディテール No.238 2023年10月号 ■特集 トレイの現在

トイレ器具数算出の注意点

空調調和・衛生工学会の「衛生器具の適正個数算定法」の適用範囲

上記で解説した通り、トイレ器具数は空調調和・衛生工学会の「衛生器具の適正個数算定法」で殆ど算定されます。

しかし、事務所の適正器具数の算定図は利用人数が300人までとなっています

つまり、0.1(人/㎡)とすると3000㎡以上の大規模オフィスには対応できていないことなります。

近年は、再開発により大規模オフィスの計画も増えているので、トレンドも考慮しつつ、トイレの器具数を決めていきましょう。

事務所衛生基準規則

労働安全衛生法では、オフィスや職場におけるトイレの数が具体的に定められています

具体的には、男性用大便所は、男性労働者60人以内ごとに1個以上- 男性用小便所は、男性労働者30人以内ごとに1個以上- 女性用便所は、女性労働者20人以内ごとに1個以上が求められています。

注意したいのは、就業人数が増えてくると、空調調和・衛生工学会の「衛生器具の適正個数算定法」にて算定した個数よりも多くなる傾向にあるため、大規模なオフィスを検討する際は注意が必要です

トイレブースの設計

トイレの器具数が決まったら、各トイレブースサイズを検討します。

トイレブースの最小寸法については、明確な規定は存在しないものの、利用者が快適に使用できるスペースを提供する必要があります。

一般的に言われる最小寸法は下図の通り、便器の先からドアまで40cm以上、便器の両側の壁まで15cmです

また、一般的なトイレブース寸法は、用途により変わりますが、大まかには

住宅(マンション):幅80cm×奥行120cm

住宅(戸建て):幅80cm×奥行160cm

オフィス等:幅90cm×奥行160cm

車いす利用者対応(φ1500確保):幅200cm×奥行200cm

上記寸法をまずは考えておくのが良いでしょう。

ただし、車いす利用者対応については、電動車いすや、その他の機能を持たせる場合、幅230cm×奥行250cm程度必要になる場合もあるので注意しましょう。

詳細な設計・現場開始後に、扉のサイズやライニングのサイズを調整することで、よりブース内を広くしたり、ブースを小さくするような検討も可能です。

おすすめ図書紹介

トイレの器具数と、トイレブースが決まると、トイレとして必要な大まかな面積がわかります。

そこから、建物全体の計画から、どの部分にトイレを配置するか検討しつつ、詳細を詰めていきます。

近年は、バリアフリーはもちろん、ジェンダーフリーの観点からも「全ての利用者が快適に使用できるように」と、トイレに求められる要求性能が上がっています。

そこで、おすすめなのが、今回の記事でも参考にした下記の書籍です。

どの施設でも必ずあるのがトイレなので、その参考事例を多数手元に置くのは、すぐに自身の計画に反映できて、業務効率向上と計画品質が格段に上がるでしょう。

「ディテール No.238 2023年10月号 ■特集 トイレの現在」

特集記事には、

・多数のブース基本寸法の図解

・オフィス・商業施設の配置計画や器具数に関する専門家の考察

・最新事例の計画意図や、配置計画・ディテールの図解

など、トイレ設計の基本から、最近のトレンド把握までの情報が多く掲載されていました。

設計や計画のお役に立つと思います。

ぜひ、手に取って見てみてください。

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