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<実務に役立つ>土間コンクリートスラブってどんなもの?何を気を付けないといけないの?についてまとめてみた

戸建ての駐車場や、簡易的な倉庫に用いることがある土間コンクリートですが、

近年の物価高の煽りを受けて、商業施設や物流倉庫の床(スラブ)に採用されることが増えてきました。

このように、土間コンクリートを建物の床(スラブ)に用いた土間コンクリートスラブについて、

メリット・デメリット、採用時の注意点についてまとめました

土間コンクリートスラブは構造計算には含まれず、軽視される傾向にあります。

しかし、実際には、建物の品質に重大な影響があるため、

しっかりとした知識がないと、大きな損害を生み出してしまう可能性があります。

この記事を読めば、土間コンクリートスラブについて、

担当するプロジェクトにおける採否を適切に判断ができるようになります

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目次

土間コンクリートスラブとは

土間コンクリートスラブとは

「1階の荷重を直接地盤に伝達するスラブ」のことを言います。

所謂、構造スラブは、1階の荷重はスラブを介して、基礎梁⇒基礎へと伝達されます。

土間コンクリートスラブとすることで、基礎梁や基礎への負担を減らし、経済的な設計とすることができます

ここで、1点注意ですが、「土間コンクリートスラブ」という言葉は厳密には正しい言い方ではありません。

JASS5には同じものを示す用語は、

「土間コンクリート」とあり、「土間コンクリートスラブ」という言葉はありません

今回は主に「建物の床」として、土間コンクリートを採用する場合についての記事なので、

「床」を差す「スラブ」を加えた「土間コンクリートスラブ」として記載します。

また、

「土間」という言葉には、使う人によって認識がズレてしまう用語なので注意が必要です。

一般的に「土間」は下の写真のように、伝統的な日本家屋にみられる「床を張らずに土足で使うことができる居住空間」を差します。

しかし、現代においても、「土間的な空間」として、玄関など、土足で利用できる空間を設えることがあります。

この時に必ずしも、

「土間的な空間」=「スラブがない」(構造スラブではない)と設計者が考えているわけではないのです。

意匠設計者は、「土足で使う空間」

構造設計者は「構造スラブではない(床がない)」

と考えているという認識の齟齬が生じがちです。

この点は、認識の齟齬がないように、確認しあうのが良いでしょう。

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土間コンクリートスラブのメリットとデメリット

土間コンクリートスラブの最大のメリットは、躯体にかかる費用が小さくできることです。

これは、1階の床に生じる荷重を、地盤が直接支えてくれるため、基礎梁や基礎が1階の床を支える必要がなく、断面を小さく設計することができるからです。

1階の床に生じる荷重分を地盤に直接伝えることができると考えると、当然、全体の延べ面積に対する1階床の面積が大きい建物の方が、躯体にかかる費用を小さくできるメリットを得られます

なので、商業施設や物流倉庫といった、高さよりも、広さ方向に大きく計画する建物用途でよく採用されるわけです。

土間コンクリートスラブのデメリットは、床のひび割れが増えることです。

ひび割れは、それが建物の品質が低いということではないですが、その建物を使うオーナー目線で考えると、あまりに多いと良い印象にはならず、建物の商品性という点ではデメリットです。

また、鉄筋コンクリートは、ひび割れなどから酸素が躯体内に入り、コンクリートが持つアルカリ性を徐々に酸化させることで、鉄筋が錆びることで劣化していきます。

その点から考えると、構造スラブと比較して相対的に耐久性は低くなります。

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土間コンクリートスラブの注意点

デメリットにあるように土間コンクリートスラブで注意したいのはひび割れです。

これは、土間コンクリートスラブの下の地盤が下がることにより生じます。

コンクリートは比較的小さな変形からひび割れが発生するため、少しの地盤の沈下でも土間コンクリートスラブの場合はひび割れが生じることになります。

そこで、大切になるのは、土間コンクリートスラブの下の地盤の締固めです

通常は、土間コンクリートスラブの下を地盤改良工事を行い締固めを行います。

ここで設計と施工時に注意したい点があります。

設計時に注意したいのは、地盤改良の下の地盤の状況です。

地盤改良された部分は、強度もあり、適切に施工されれば沈下する可能性は低いでしょう。

しかし、地盤改良の下の地盤が、緩い場合や液状化するような場合は、地盤改良ごと沈下してしまう可能性もあります。

通常、設計時は、ボーリングによる地盤調査を行います。

この地盤調査あくまで敷地内の数点をサンプリングして行うものなので、

完璧に敷地内の地盤状況を捉えているわけではありません。

数点行った地盤調査の結果が概ね同じ傾向にあれば、その結果をもとに推定することは妥当ですが、

例えば、敷地内でも地盤状況、ボーリング孔ごとに違うことがあります。

この場合、地盤調査の結果の精査が甘いと、思わぬところで沈下が生じる可能性がありますので、

構造設計者にしっかりと地盤調査の所見をもらうようにしましょう。

施工時に注意したのは、躯体付近の埋め戻しです。

多くの場合、土間コンクリートスラブを施工する際には、基礎梁などの躯体を作り始める前に、土間コンクリートスラブ下の地盤改良工事を行います。

そのあと、基礎梁部分を掘削し、配筋、型枠施工、コンクリート打設、掘削部分を埋め戻し、といった工程で施工を行います。

つまり、基礎梁躯体付近は、地盤改良工事で締まった土を、堀ほぐしてしまうわけです

その部分の埋め戻しをしっかりと行わないと、その部分が沈下することで、土間コンクリートスラブに大量のひび割れが発生してしまいます。

なので、埋め戻しについては、しっかりと施工者に施工方法を確認する必要があります。

標準仕様書には30cm以下ごとに転圧することが示されていますので、それは最低限行われているかをチェックしましょう。

ちょっと予備知識

これまで述べた通り、土間コンクリートスラブではひび割れに対するケアを行います。

しかし、コンクリートはそもそもひび割れる材料です。

どんなに気を使っても、土間コンクリートスラブでのひび割れをなくすことはできないですし、それは構造スラブにしても同じです。

ひび割れをなくすことは、構造スラブを採用した場合でもできませんが、

多数のひび割れが許容できない場合は、土間コンクリートスラブ採用しないことが無難です。

一方、採用することに対して、特に問題がない場合、構造計算上見込まれない部材となるため、品質管理を甘くなりがちです。

しかし、構造スラブと土間コンクリートスラブの両方に区別なく、スラブというのは、

構造計算における最も根本的な仮定である「剛床仮定」を成立させるために非常に重要です。

剛床仮定とは、建物の床は地震時に一体になって動くという仮定です。

一体に動くためには、床が健全に一体であることが必要です。

そういった意味で、土間コンクリートスラブについても間接的に、構造計算に考慮されているわけです。

そのため、土間コンクリートスラブだからと言って、侮ることなく、しっかりと品質管理しましょう。

書籍紹介

この記事は、下記の書籍も参考にしています。

ひび割れに関する知識が盛りだくさんの良書です。


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