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はじめに ― いま、国土強靱化は“第二章”へ
2024年‐25年シーズンは、正月の能登半島地震、夏の線状降水帯豪雨、首都圏で起きた道路陥没事故が連続し、「復旧より事前対策を強化せよ」という世論が一段と高まりました。
政府はこの流れを受け、2025年6月6日に国土強靱化年次計画2025を決定。
同日、2026〜2030年度を対象とする「第1次国土強靱化実施中期計画」も閣議決定し、ハード中心の施策を「情報×連携×DX」へ加速させる方針を示しました。cas.go.jpsmbiz.asahi.com
国土強靱化計画とは何か

国土強靱化は、2013年制定の「国土強靱化基本法」に基づく国家横断プロジェクトです。
巨大地震や気候変動リスクを“同時多発”前提で捉え、「社会が致命的に止まらない仕組みづくり」を掲げています。
基本法の下には①5年ごとの基本計画、②新設された5年単位の実施中期計画、③毎年アップデートされる年次計画の三層があり、政府はPDCAで施策を高速回転させています。www5.cao.go.jp
レイヤー | 更新頻度 | 主な内容 | 実務上の着眼点 |
---|---|---|---|
基本計画 | 5年ごと | 国家ビジョンと目標指標を設定(現行は2023改定版) | 研究テーマ・設計指針がここで提示 |
実施中期計画 | 5年ごと〈NEW〉 | 2026-30年度:総事業費約20兆円超、老朽インフラ更新・DX投資を重点化 | 大型PPP/遠隔施工案件が集中 (smbiz.asahi.com) |
年次計画 | 毎年 | 進捗レビュー+翌年度重点施策(最新=2025年版) | 小規模実証・自治体公募が豊富 |
年次計画2025──“初動48 時間DX”が標準へ

年次計画2025の最大トピックは、「ドローン+LiDAR点群で被害を48時間以内に俯瞰」という初動DXの標準化です。
能登半島地震で実証済みのワークフローを全国共通し、市町村でも使えるクラウド基盤を国が提供します。孤立集落対策としては衛星ブロードバンド併用のモバイル基地局車を常備化し、通信レジリエンスも強化。
さらに成果連動型ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)の導入が明記され、防災インフラを“投資案件”として組み立てる試行も始まります。
※ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB):行政が先に税金を支出する従来の委託契約と違い、まずは投資家が資金を立て替え、目標を達成した場合にのみ元本+成果報酬が返ってくる方法
第1次実施中期計画(2026–2030)──20兆円投資の行方

中期計画は、向こう5年間で総額約20兆円強を投じるロードマップです。
予算の約半分は橋梁・港湾・道路など老朽インフラの耐震補強に充当され、0.3兆円が「デジタル新技術枠」として確保されました。
ここではデジタルツインや遠隔施工、AI劣化診断といった「i-Construction 2.0」の要素技術を全国展開する方針が示されています。
人口減少下で維持管理コストを抑えるスマート保全モデルが中核で、センサ計測‐クラウド解析‐自動発注まで一気通貫で回す標準化作業が本格化します。
区分(計画本文の章立て) | 主な内容・対象 | 事業規模(兆円) |
---|---|---|
Ⅰ 防災インフラの整備・管理 | 河川・砂防・海岸、道路・橋梁、港湾・空港等の耐震・老朽化対策 | 約 5.8 |
Ⅱ ライフラインの強靱化 | 上下水道、送配電網、通信・エネルギー、交通ネットワークの冗長化 | 約 10.6 |
Ⅲ デジタル等新技術の活用 | デジタルツイン、AI 劣化診断、遠隔施工、ドローン・LiDAR 等 | 約 0.3 |
Ⅳ 官民連携強化 | PPP/PFI、成果連動型 SIB、BCP 支援、人材育成ファンド等 | 約 1.8 |
Ⅴ 地域防災力の強化 | 避難所・医療拠点強化、地方創生と連動したハード・ソフト施策 | 約 1.8 |
総 計(5年間) | Ⅰ〜Ⅴの合計 | おおむね 20.0 〜 20.5 |

若手技術者が身につけるべき5つの視点

視点 | 具体イメージ | 習得ヒント |
---|---|---|
学際的IT力 | Python・AWS でBIM/CIMデータ可視化 | JACIC eラーニング (jacic.or.jp) |
デジタルツイン&SHM | 点群×IoTセンサで健全度を常時計測 | 測震ナビ®導入事例 (taisei.co.jp) |
サステナブル適応 | 流域治水・ブルーカーボン護岸 | 吉野川プロジェクト2.0 (skr.mlit.go.jp) |
PPP/PFI+SIB | 技術×財務のハイブリッド提案 | 実証案件の公募資料を研究 |
BCP×ステークホルダー | ICSで自治体・企業を接続 | 防災DXアワード受賞事例 (https://ssmartace.or.jp/award2025/) |
- 学際的スキルセット
IoTセンサで取得したデータをクラウドへ送り、BIM/CIMで可視化する工程には Python や AWS の運用知識が欠かせません。建築だけの知識ではなく、よりハイブリッドなスキルが求められる時代になっており、もはや一般教養的な扱いに近くなっていくる可能性があります。 - デジタルツイン&SHMの実装力
構造ヘルスモニタリング(SHM)を仮想空間と連携させ、健全度をリアルタイム評価できる人材は希少です。どういったもので、どういった活用法ができるのかは、知っておきたい知識です。 - サステナブル・アダプテーション思考
ブルーカーボン護岸や流域治水のように生態系を取り込みながら防災性能を底上げする設計が主流化しています。ただ単にコンクリートで固めるような防災力向上だけは時代ニーズを捉えられなくなっています。 - PPP/PFI+ファイナンスリテラシー
SIBを含む成果連動型スキームが拡大し、技術提案と収支モデルを同時に語れる若手が採択競争を制します。投資家から成果を求められる厳しい環境になってくることも意識しましょう。 - BCPとステークホルダー連携
企業内ICS(Incident Command System)や自治体・NPOとの連携プロトコルを理解することが、現場の信頼を左右します。色々な企業が取り組んでる内容を知り、都度、相談・活用できるように技術者を目指しましょう

現場で輝く最新4事例

① 能登空港:ドローン×点群で48時間評価
令和6年能登半島地震では、滑走路に多数の亀裂と段差が生じ、灯火も損傷した【国交省資料】。現地入りした国交省チームは発災当日から大型ドローンで上空撮影し、その場で LiDAR 点群を生成。クラウド上で自動ヒートマップ化し、危険箇所の優先補修指示を48 時間で完了させた。被害の可視化と指示系統を同一プラットフォームに載せることで、復旧準備日数を従来比3分の1に短縮した。このワークフローは年次計画 2025 の「初動 DX 標準手順」にそのまま採用されている。mlit.go.jp mlit.go.jp
② 吉野川流域:AI放流制御で越水リスク▲30%
四国地方整備局は吉野川水系で、ダム・堤防・遊水地をクラウド連携させる「流域治水デジタルテストベッド」を整備中です。雨量レーダーと河川水位を学習した機械学習モデルが30 分先の流量を予測し、自動でダム放流量を最適化を行っています。2024 年の出水期試行では、同規模降雨のシミュレーション比較で越水リスクを30%削減できたと報告されています。ここでは Python での時系列解析や API 連携が日常業務になっており、ソフトウェアスキルを持つ構造・水工技術者が即戦力として重宝される人材となっています。cas.go.jp skr.mlit.go.jp
③ 遠隔施工:30km先からバックホウを操縦
i-Construction 2.0 の柱の一つが「遠隔/自動施工」です。2024 年度、国交省発注21件の通常工事で遠隔施工が導入され、オペレーターは本社の操作室からバックホウを遠隔制御し、ICT 起工測量データをリアルタイム共有を実施しました。2025 年度は発注ルールが整備され、全国で大幅拡大が見込まれています。mlit.go.jp
④ 構造ヘルスモニタリング(SHM):地震後数分で建物健全性判定
大成建設の測震ナビ®や、NTTファシリィーズの揺れモニ®はMEMS加速度計とクラウド解析で建物健全性判定を数分で評価。自治体庁舎や病院で採用が進み、能登地震でも避難所機能を維持しました。taisei-techsolu.jp https://www.ntt-f.co.jp/service/building/yuremoni/

まとめ ― レジリエンス・フルスタックへの第一歩
国土強靱化は「工学×デジタル×金融×ガバナンス」が交差する総合競技に進化しました。若手時代にDXとファイナンスの橋渡しを経験しておけば、十年後にはプロジェクトリーダーの椅子が見えてきます。“防災=テクノロジー+ネットワーク+ビジネスセンス”。次に年次計画を開き、あなたの専門で国土をしなやかにするイノベーションを探しに行きましょう。
参考図書

建設DX2 データドリブンな建設産業に生まれ変わる
国交省協力の『建設DX 2』はAI施工・遠隔制御・デジタルツイン30事例を徹底図解。日経BP発行でAmazon建設書1位、初版限定BIMテンプレ付き&残部わずか──権威×希少の必携書!

PPP/PFIに取り組むときに最初に読む本
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