建築現場では、「スラブ」という言葉がよく使われます。
「スラブ厚はいくつですか」
「スラブにコア抜きできますか」
「土間スラブだから大丈夫です」
「スラブ下で何mm取れますか」
このように、設計、施工、改修、発注者打合せの中で当たり前のように出てくる言葉です。
ただし、注意したいのは、スラブという言葉が指している内容は意外と広いということです。
床スラブ、土間スラブ、構造スラブ、基礎スラブ、マットスラブ、耐圧盤。
どれも「板状のコンクリート部材」という意味では似ていますが、構造上の役割、荷重の流れ、確認すべき図面、改修時の注意点は大きく違います。
特に実務で危ないのは、次のような判断です。
「床に少し穴を開けるだけだから構造には影響しない」
「土間スラブも構造スラブと同じように考えればよい」
「スラブ下高さと天井高さは同じ意味だと思っている」
これらは、現場ではよくある誤解です。
この記事では、スラブとは何かを入口に、床スラブ、土間スラブ、構造スラブ、基礎スラブ、マットスラブ、耐圧盤の違いを、建築実務者向けに整理します。
この記事を読むと、次の内容を整理できます。
・スラブとは何か
・コンクリートスラブとは何を指すのか
・床スラブ、土間スラブ、構造スラブ、基礎スラブの違い
・スラブ厚さと耐荷重をどう考えるべきか
・スラブにコア抜き、床開口、あと施工アンカーを行うときの注意点
・スラブ下と天井高さの違い
・改修工事や用途変更で既存スラブを確認するときの実務ポイント
なお、この記事は一般的な考え方を整理するものです。
実際の可否判断は、設計図書、構造計算書、現地調査、構造設計者、確認検査機関、専門工事会社の確認を前提にしてください。
スラブとは何か

建築におけるスラブとは、一般に板状のコンクリート部材を指します。
英語の slab には「板」「厚板」という意味があり、建築では、床や基礎を構成する平面的なコンクリート部材を指すことが多いです。
日本語の実務では、単に「スラブ」と言った場合、床スラブを指すこともあれば、土間スラブ、基礎スラブ、屋根スラブを指すこともあります。
ただし、ここで重要なのは、すべてのスラブが同じ構造的役割を持つわけではないという点です。
たとえば、上階の床スラブは、人や家具、設備、仕上げなどの荷重を受けて、梁や壁に力を伝える部材です。
一方、土間スラブは地盤の上に打設される床コンクリートで、基本的には地盤に支持されます。
さらに、基礎スラブや耐圧盤は、建物荷重を地盤に伝える基礎の一部として扱われます。
つまり、スラブは大きく見ると、次のような役割に分かれます。
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| 床を構成する部材 | 各階の床面をつくる |
| 荷重を伝える構造部材 | 人・物・設備などの荷重を梁、壁、柱、基礎へ伝える |
| 地盤上の床 | 土間床、倉庫床、工場床、駐車場床などをつくる |
| 基礎の一部 | 建物荷重を地盤へ伝える |
| 設備・仕上げを受ける面 | 配管、ダクト、天井、あと施工アンカー、仕上げの下地となる |
したがって、実務では「スラブ」と聞いたときに、まず次の問いを立てることが重要です。
そのスラブは、何を支えて、どこへ力を流しているのか。
この視点を持つだけで、床荷重、コア抜き、あと施工アンカー、床開口、用途変更、重量物設置の判断精度が大きく変わります。
床スラブとは何か

床スラブとは、建物の各階の床を構成するスラブです。
マンションの住戸床、事務所ビルの執務室床、商業施設の売場床、ホテルの客室床、倉庫の中間階床など、建物の上部階にある床の多くは床スラブによって構成されています。
床スラブの基本的な役割は、床に作用する荷重を受けて、梁、壁、柱などへ伝えることです。
床に作用する荷重には、主に次のようなものがあります。
・スラブ自体の重さ
・床仕上げ、天井、配管、設備などの固定荷重
・人、家具、什器、荷物、機械などの積載荷重
・地震時に床面を介して伝達される水平力
・遮音、防振、耐火に関わる性能要求
建築基準法施行令第85条では、建築物の各部の積載荷重は実況に応じて計算することを原則とし、用途に応じた床の積載荷重の考え方が示されています。
つまり、床スラブの耐荷重は「何となく大丈夫」ではなく、用途と荷重条件に基づいて確認する必要があります。
RC造の床スラブ
RC造では、床スラブは鉄筋コンクリートの板として設計されます。
梁に囲まれたスラブが四辺で支持される場合もあれば、壁式構造のように壁に支持される場合もあります。
RC床スラブでは、スラブ厚さ、主筋方向、配力筋、開口補強、かぶり厚さ、ひび割れ、たわみなどが重要になります。
特に若手の実務者が意識したいのは、スラブは単に鉛直荷重を支えているだけではないという点です。
地震時には、床面が水平構面として働き、耐震壁や柱・梁架構へ水平力を伝える役割を持つ場合があります。
S造の床スラブ
S造では、鉄骨梁の上にデッキプレートを敷き、その上にコンクリートを打設する床構成が多く使われます。
代表的には、次のような形式があります。
・合成デッキスラブ
・フラットデッキを型枠として使う在来スラブ
・PCa床版
・ALC床、押出成形セメント板などを併用する床構成
合成デッキスラブでは、デッキプレートとコンクリートが一体となって床として機能します。
一方、フラットデッキは型枠として使われるもので、構造的な考え方は合成デッキとは異なります。
この違いは、改修時に非常に重要です。
たとえば、床下からあと施工アンカーを打つ場合、デッキ形状、コンクリート厚、鉄筋位置、デッキ山谷、耐火被覆、設備配管との干渉を確認する必要があります。
SRC造の床スラブ
SRC造では、鉄骨と鉄筋コンクリートが組み合わされた構造の中で床スラブが設けられます。
古い建物では、図面の読み方が難しく、梁型、鉄骨位置、配筋、床開口補強、設備貫通の履歴が分かりにくい場合があります。
既存建物でSRC造の床スラブに手を入れる場合は、構造図だけでなく、竣工図、改修履歴、現地調査、非破壊探査を組み合わせて確認することが重要です。
構造スラブとは何か

構造スラブとは、構造上、荷重を負担し、梁、壁、柱、基礎などへ力を伝えるスラブです。
床スラブと構造スラブは、実務上重なることが多くあります。たとえば、RC造マンションの各階床スラブは、床スラブであると同時に構造スラブでもあります。
ただし、「床スラブ」は場所に注目した言い方であり、「構造スラブ」は役割に注目した言い方です。
構造スラブで確認すべき主な項目は、次のとおりです。
・スラブ厚さ
・コンクリート強度
・鉄筋径、ピッチ、方向
・支持条件
・スパン
・梁、壁、柱との取り合い
・開口の有無
・開口補強の有無
・あと施工アンカーの埋込み長さ
・重量物や機械基礎の局部荷重
・ひび割れ、漏水、劣化状況
構造スラブで特に注意したいのは、床面に穴を開ける、重いものを載せる、アンカーを打つという行為が、構造性能に影響する可能性があるということです。
小さなコア抜きであっても、鉄筋を切断すれば耐力低下やひび割れの原因になります。
大きな床開口では、曲げ、せん断、ねじり、水平力伝達、床剛性に影響する可能性があります。
また、あと施工アンカーも「コンクリートにボルトを固定するだけ」ではありません。アンカーは、コンクリート母材、埋込み長さ、へりあき、アンカー間隔、引張力、せん断力、ひび割れの有無、施工品質によって性能が変わります。
国土交通省は、既存建築物の改修工事を対象に、あと施工アンカー等の一般的な設計・施工上の条件を示した指針を公表しています。スラブにあと施工アンカーを使う場合も、製品仕様だけでなく、設計条件・施工条件・適用範囲を確認することが重要です。
土間スラブとは何か

土間スラブとは、地盤上に施工される床コンクリートです。
住宅の土間、倉庫の1階床、工場床、駐車場床、店舗の床、機械室床などで使われます。英語では slab on grade と呼ばれることもあります。
土間スラブの基本的な考え方は、上階床スラブとは異なります。
上階の床スラブは、荷重を梁や壁に伝えます。一方、土間スラブは、基本的には地盤に支持されます。
このため、土間スラブでは次のような論点が重要になります。
・地盤の支持性能
・路床、路盤、砕石、転圧状態
・防湿シートの有無
・土間コンクリート厚さ
・ワイヤーメッシュ、鉄筋、繊維補強の有無
・目地計画
・乾燥収縮ひび割れ
・不同沈下
・フォークリフト走行
・ラック荷重
・重量機械の設置
・床の平坦性、耐摩耗性、防塵性
ここでよくある誤解が、土間スラブも構造スラブと同じように考えてよいというものです。
しかし、土間スラブは地盤に支えられる床であり、梁に架かる床スラブとは荷重の流れが異なります。
したがって、上階床スラブのように「スパンに対して曲げで持たせる」という見方だけでは不十分です。
一方で、土間スラブだから構造的に軽視してよい、という意味でもありません。
倉庫、工場、駐車場、物流施設では、土間スラブの性能がそのまま運用性能に直結します。
フォークリフトの走行で床が傷む、ラック下で局部沈下が起きる、ひび割れから粉じんが出る、床レベルが乱れて自動倉庫に支障が出る、といった問題は、建物の使い勝手に大きく影響します。
土間スラブについては、別記事「土間スラブとは?構造スラブとの違い・厚さ・施工注意点を実務目線で解説」で、厚さ、配筋、目地、地盤、倉庫床の注意点まで詳しく整理するとよいでしょう。

基礎スラブ・マットスラブ・耐圧盤とは何か

基礎スラブとは、基礎の一部として使われる板状のコンクリート部材です。
床スラブや土間スラブと見た目が似ているため混同されやすいですが、基礎スラブは建物荷重を地盤へ伝える重要な構造部材です。
直接基礎と基礎スラブ
直接基礎では、建物の荷重を地盤に直接伝えます。独立基礎、布基礎、べた基礎などがあります。
べた基礎では、建物下部に板状の鉄筋コンクリートを設け、建物荷重を広い面で地盤に伝えます。この板状部分を基礎スラブ、耐圧盤などと呼ぶことがあります。
マットスラブとは
マットスラブとは、建物全体または広い範囲を一体の板状基礎として支える考え方です。マット基礎、ラフト基礎と呼ばれることもあります。
柱や壁からの荷重を広い面に分散し、地盤へ伝えるため、地盤条件、不同沈下、接地圧、基礎梁との関係、地下水、浮力などを含めて設計されます。
耐圧盤とは
耐圧盤とは、一般に、建物荷重や土圧・水圧などに抵抗しながら地盤へ力を伝える板状の基礎部材を指して使われます。
地下階の床やべた基礎の底盤を「耐圧盤」と呼ぶことがあります。土間スラブと同じように床面として見える場合もありますが、構造上はまったく別の意味を持つことがあります。
特に地下の耐圧盤では、建物荷重だけでなく、地下水による浮力、水圧、地盤反力、基礎梁との一体性が関係します。改修で床をはつる、ピットを設ける、機械基礎を追加する場合は、単なる土間床として扱うのではなく、構造設計者への確認が必要です。
スラブの種類を比較する

スラブの種類を整理すると、次のようになります。
| 種類 | 主な場所 | 構造上の役割 | 荷重の流れ | 確認すべきこと | よくある誤解 |
|---|---|---|---|---|---|
| 床スラブ | 各階の床 | 床を構成し、荷重を支持する | 床荷重 → スラブ → 梁・壁 → 柱・基礎 | 厚さ、配筋、スパン、床荷重、たわみ、振動、遮音 | 床ならどこでも同じ性能と思う |
| 構造スラブ | 上階床、屋根、地下床など | 荷重を負担する構造部材 | スラブ → 梁・壁・柱・基礎 | 配筋、支持条件、開口、アンカー、重量物 | 少しの開口なら構造に影響しないと思う |
| 土間スラブ | 1階床、倉庫床、工場床、駐車場床 | 地盤上の床として機能 | 荷重 → 土間スラブ → 地盤 | 地盤、路盤、厚さ、目地、ひび割れ、沈下 | 土間スラブもすべて構造スラブだと思う |
| 基礎スラブ | 建物基礎部分 | 建物荷重を地盤へ伝える | 柱・壁荷重 → 基礎スラブ → 地盤 | 地耐力、接地圧、配筋、地下水、沈下 | 土間スラブと同じ床コンクリートだと思う |
| マットスラブ | べた基礎、大規模基礎 | 広い面で建物を支える | 建物荷重 → マットスラブ → 地盤 | 地盤反力、不同沈下、浮力、基礎梁 | 厚い土間程度に考えてしまう |
| デッキスラブ | S造の床 | 鉄骨梁上の床を構成 | 床荷重 → デッキ+コンクリート → 鉄骨梁 | デッキ種別、山谷、コンクリート厚、耐火、アンカー | フラットデッキと合成デッキを同じと思う |
この表で見ておきたいのは、スラブの名称ではなく、荷重の流れが違うという点です。
「コンクリートの板」という見た目は似ていても、梁に架かる床なのか、地盤に支持される床なのか、建物荷重を地盤へ伝える基礎なのかで、確認すべき内容は変わります。
スラブ厚さと耐荷重はどう考えるのか

「スラブ厚さは何mmあれば大丈夫ですか」
「このスラブは何kgまで載せられますか」
これは、実務で非常によく聞かれる質問です。
しかし、スラブの耐荷重は、厚さだけでは判断できません。
スラブ厚さと耐荷重は、次の条件によって変わります。
・用途
・積載荷重
・スパン
・支持条件
・構造形式
・コンクリート強度
・鉄筋径、ピッチ、かぶり
・短辺方向、長辺方向の力の流れ
・梁や壁との取り合い
・開口の有無
・劣化、ひび割れ、漏水の有無
・局部荷重か等分布荷重か
・静的荷重か動的荷重か
たとえば、同じ150mm厚のスラブでも、短いスパンで四辺支持されている場合と、長いスパンで片持ちに近い状態になっている場合では、耐荷重の考え方は変わります。
また、床に置くものが同じ重量でも、広い面で均等に載るのか、小さな脚部に集中して載るのかで、スラブへの影響は違います。
「厚いから安全」とは言えない
スラブが厚ければ、一般には剛性や耐力に有利に働く場合が多いです。しかし、厚いから必ず安全とは言えません。
理由は、スラブの耐力には配筋が大きく関係するからです。
鉄筋コンクリートは、コンクリートと鉄筋が一体となって力に抵抗します。コンクリート厚だけを見ても、どの方向に鉄筋が入っているか、どの位置に入っているか、どの程度のピッチかが分からなければ、構造的な判断はできません。
重量物設置で注意すべきもの
重量物を設置する場合は、必ず床スラブの耐荷重を確認します。特に注意したいのは次のようなものです。
・書庫、移動書架
・サーバーラック
・蓄電池、受変電設備
・空調機、室外機、チラー
・厨房機器
・医療機器
・倉庫ラック
・フォークリフト
・機械基礎
・太陽光発電設備
・水槽、受水槽
・重量什器、金庫
事務所用途で設計された床に、サーバーラックや移動書架を集中配置する場合、一般的な事務室の荷重条件を超える可能性があります。
また、倉庫や物流施設では、ラック脚部の局部荷重、フォークリフトの輪荷重、走行による繰り返し荷重が問題になります。
スラブに穴を開けるときの注意点

スラブに穴を開ける工事には、コア抜き、スリーブ、床開口、設備配管、排水管貫通、ダクト貫通、あと施工アンカーなどがあります。
新築工事であれば、構造設計段階でスリーブ位置や床開口を整理できます。しかし、改修工事では、既存スラブに後から穴を開けることが多く、注意が必要です。
コア抜きの注意点
コア抜きで最も注意すべきことは、鉄筋切断です。
スラブ内の鉄筋を切断すると、曲げ耐力、ひび割れ抵抗、せん断抵抗、開口周辺の応力状態に影響する可能性があります。小径のコアでも、鉄筋位置と重なれば問題になります。
また、防水層、遮音性能、耐火区画、床衝撃音、漏水、下階天井内設備にも影響する場合があります。
既存建物でコア抜きを行う場合は、少なくとも次の確認が必要です。
・構造図、配筋図、竣工図の確認
・既存改修履歴の確認
・電磁波レーダー探査
・必要に応じたX線探査
・鉄筋位置、配管位置、デッキ位置の確認
・構造設計者による開口可否確認
・防火区画、防水、遮音、漏水対策の確認
床開口の注意点
床開口は、コア抜きよりも影響が大きくなりやすい工事です。
階段、エレベーター、ダムウェーター、荷物用リフト、配管シャフト、設備更新用の大開口を設ける場合、床スラブだけでなく、周辺梁、柱、壁、水平構面としての床剛性に影響する可能性があります。
既存倉庫に荷物用エレベーターを増設する、事務所床に吹抜けをつくる、メゾネット化のために床を抜く、といった改修では、単に「床を切る」ではなく、構造計画の変更として扱う必要があります。
あと施工アンカーの注意点
あと施工アンカーは、設備架台、配管支持、手すり、機械基礎、耐震補強、間仕切り固定などで使われます。
しかし、スラブにアンカーを打つ場合は、次の点を確認する必要があります。
・アンカー種別
・埋込み長さ
・へりあき
・アンカー間隔
・母材コンクリート強度
・スラブ厚さ
・鉄筋位置
・デッキプレートの有無
・引張力、せん断力
・ひび割れコンクリートかどうか
・上向き施工か下向き施工か
・施工者資格、施工管理、引張試験の要否
日本建築あと施工アンカー協会は、あと施工アンカーの品質や設計・施工に関する調査研究、施工指針の公開・普及を行っており、公共建築改修工事標準仕様書などでも関連指針が参照されています。あと施工アンカーを「現場で簡単に打てる固定具」として扱うのではなく、設計・施工・検査を含む工事として管理することが重要です。

スラブ下とは何か

スラブ下とは、一般に上階床スラブの下面を指します。
オフィスや商業施設、ホテル、倉庫などでは、設計・施工打合せで「スラブ下でいくつ取れますか」「梁下は何mmですか」「天井高さはどれくらい確保できますか」という会話がよくあります。
ここで重要なのは、スラブ下高さと天井高さは同じではないということです。
スラブ下高さ
スラブ下高さとは、床仕上げ面などの基準から、上階スラブ下面までの高さを指して使われることが多いです。ただし、実務では基準の取り方があいまいになりやすいため、FLからなのか、SLからなのか、仕上げ面からなのかを確認する必要があります。
天井高さ
天井高さとは、床仕上げ面から仕上げ天井面までの高さです。
スラブ下面と天井面の間には、次のものが入ります。
・梁
・ダクト
・配管
・電気配線
・照明器具
・スプリンクラー配管
・空調機器
・天井下地
・点検口
・防火区画貫通処理
・遮音、防振材
つまり、スラブ下高さが十分にあっても、梁下、ダクト下、設備スペースを考慮すると、実際の天井高さが確保できない場合があります。
特に用途変更や改修工事では、既存スラブ下に新たな設備を入れることが多くなります。倉庫を事務所化する、事務所をクリニック化する、ホテルを別用途に変える、商業施設に飲食テナントを入れる場合などは、スラブ下高さだけでなく、設備ルートと天井高さを一体で確認する必要があります。

実務でよくある誤解

誤解1:土間スラブもすべて構造スラブだと思っている
土間スラブは地盤上の床であり、基本的には地盤に支持されます。上階床スラブのように梁に荷重を流す構造スラブとは考え方が異なります。
ただし、土間スラブでも、重量物、フォークリフト、ラック、地盤沈下、不同沈下、目地、ひび割れが問題になるため、軽視してよいわけではありません。
誤解2:コンクリートが厚ければ何を載せてもよい
スラブ厚さは重要ですが、耐荷重は厚さだけで決まりません。配筋、支持条件、スパン、荷重のかかり方、劣化状況、開口の有無を確認する必要があります。
特に、重量物の脚部に荷重が集中する場合は、床全体の等分布荷重だけでなく、局部荷重の確認が必要です。
誤解3:床に少し穴を開けるだけなら構造に影響しない
小さなコア抜きでも、鉄筋を切断すれば構造性能に影響する可能性があります。また、構造だけでなく、防水、耐火、遮音、漏水、下階天井内設備にも影響します。
「穴が小さいから大丈夫」ではなく、「どこに、どの径で、何本、何のために開けるのか」を確認することが必要です。
誤解4:スラブ下高さと天井高さを同じ意味で使っている
スラブ下高さは、上階床スラブ下面までの高さです。天井高さは、仕上げ天井面までの高さです。
両者の間には梁や設備が入るため、スラブ下高さが高くても、天井高さが確保できるとは限りません。
誤解5:基礎スラブと土間スラブを混同している
基礎スラブ、マットスラブ、耐圧盤は、建物荷重を地盤へ伝える構造部材です。一方、土間スラブは地盤上の床として施工されるものです。
見た目は似ていても、構造上の意味は大きく違います。地下階やべた基礎の床面をはつる場合は、特に注意が必要です。
誤解6:既存図面があるから現地確認は不要だと思っている
既存図面は重要ですが、図面だけで判断するのは危険です。
竣工時から改修されている、図面と現場が違う、配筋が不明、あと施工アンカーやコア抜きの履歴がある、設備配管が追加されている、ということは珍しくありません。
既存建物では、図面確認と現地確認をセットで行うことが基本です。
発注者・施工者・設計者が確認すべきチェックリスト

スラブに関する確認事項を、場面別に整理します。
| 場面 | 発注者・PM・CMが確認すること | 設計者・構造設計者が確認すること | 施工者が確認すること |
|---|---|---|---|
| 新築時 | 想定用途、将来用途、重量物、設備更新余地 | 床荷重、スパン、厚さ、配筋、開口、設備荷重 | 打設計画、配筋検査、スリーブ位置、かぶり、養生 |
| 改修時 | 既存図面の有無、改修履歴、用途変更の有無 | 既存耐力、開口影響、補強要否、法規遡及 | 現地調査、探査、はつり範囲、仮設、漏水対策 |
| 用途変更時 | 新用途の床荷重、設備荷重、避難・防火条件 | 既存スラブが新用途に耐えられるか | 既存仕上げ撤去、設備ルート、天井高さ |
| 重量物設置時 | 重量、設置位置、将来増設、運用条件 | 等分布荷重、局部荷重、たわみ、振動 | 搬入経路、養生、架台、アンカー施工 |
| 床開口時 | 開口目的、位置、将来復旧、下階影響 | 開口補強、梁追加、水平構面、耐火・遮音 | 墨出し、探査、切断方法、仮支持、粉じん・騒音 |
| コア抜き時 | 必要本数、径、位置、下階用途 | 鉄筋切断可否、補強要否、防火区画 | レーダー探査、X線探査、排水、養生、貫通処理 |
| あと施工アンカー時 | 何を固定するか、荷重条件、落下リスク | アンカー種別、埋込み、へりあき、母材強度 | 穿孔、清掃、施工温度、硬化時間、引張試験 |
このチェックリストで特に大切なのは、発注者側も「専門家に任せる」だけにしないことです。
発注者、PM、CMは、少なくとも次の情報を整理して設計者・施工者へ渡す必要があります。
・何をしたいのか
・どこに設置したいのか
・どのくらいの重さか
・将来増える可能性はあるか
・その床の用途は変わるのか
・下階に影響が出ると困る用途はあるか
・営業しながら工事するのか
構造設計者は、荷重、支持条件、配筋、開口、補強を確認します。施工者は、図面と現場が合っているか、探査結果と施工位置が合っているか、施工品質が確保できるかを確認します。
スラブのトラブルは、設計だけ、施工だけ、発注者だけの問題ではありません。三者の情報共有が不足したときに起きやすいのです。
まとめ|スラブは単なる「床のコンクリート」ではない
スラブとは、建築における板状のコンクリート部材を指す言葉です。
ただし、実務では、スラブを単なる「床のコンクリート」として扱うと判断を誤ります。
床スラブは、各階の床を構成し、荷重を梁や壁に伝える部材です。
構造スラブは、構造上の荷重を負担する重要な部材です。
土間スラブは、地盤上に施工される床で、地盤、路盤、沈下、ひび割れ、重量物に注意が必要です。
基礎スラブ、マットスラブ、耐圧盤は、建物荷重を地盤に伝える基礎の一部です。
スラブ厚さや耐荷重を考えるときは、厚さだけで判断してはいけません。用途、スパン、支持条件、配筋、荷重のかかり方、開口、劣化状況を確認する必要があります。
また、コア抜き、床開口、あと施工アンカーは、スラブの構造性能、防水、耐火、遮音、設備に影響する可能性があります。既存建物では、構造図、配筋図、竣工図、現地調査、非破壊探査、構造設計者確認を組み合わせることが重要です。
最後に、実務でスラブを見るときの基本は、次の一言に集約できます。
そのスラブは、何を支え、どこへ力を流しているのか。
名称だけで判断せず、荷重の流れ、支持条件、配筋、用途、改修内容を確認する。
これが、設計者、施工管理者、発注者側技術担当者、PM・CMが共通して持つべきスラブ理解の基本です。
スラブについてさらに詳しく確認したい場合は、土間スラブ、コア抜き、あと施工アンカー、天井高さ・階高、コンクリート打設の記事もあわせて確認してください。

コメント